日本プライマリ・ケア連合学会認定 家庭医療専門医後期研修プログラム Ver.2

徳島大学AWA広域総合診療医養成プログラム


A. プログラムを展開する場や医療施設の地域背景や特徴

 徳島大学総合診療医学分野は、2007年に地域医療学分野として創設された。2010年には総合診療医学分野と改称し、徳島県の地域医療を担うとともに若い人材の育成に努めてきた。また、20164月には大学病院に総合診療部が設置され、ますますの広がりが期待されている。

 私たちは年2回の徳島地域医療教育研究会を主催しており、地域医療教育に関心をもつ地域医療期間の医師・医療スタッフが集い、定期的な交流を行っている。本プログラムはそのような有志の地域医療機関で構成された研修関連施設群である。

プログラムを管理する徳島大学病院は特定機能病院であり、我々の医局(総合診療医学分野)を包有する。さらに、2016年4月に病院内に総合診療部を開設し、2017年6月から診療活動を開始した。

教室スタッフ


家庭医療専門医養成プログラムには20143月卒以前の若い医師のみならず、卒後10年以降の中堅からベテラン医師も参加する可能性がある。彼らのうち卒後早期から総合診療医として修練を積んできた者にとっては、上述の市中病院における再研修の意義は比較的小さく、むしろ大学病院において内科・小児科・救急科・その他領域各科の研修を行う意義が大きい。また当科と密に連携を行えるメリットもある。

徳島県立中央病院、徳島赤十字病院および徳島市民病院は徳島県東部の医療の中心を担う総合病院として、症例数も多く救急医療から内科、小児科、総合診療といった領域で診療の深さと広さを身に着けることができる。徳島県鳴門病院は、徳島県北部の中核的医療機関であり、急性期医療から在宅医療、予防医療まで行っており、臓器別ではない内科および小児科の初診外来や救急、病棟を担当することで幅広い総合内科診療能力を身につけることのできる病院である。

徳島県立三好病院およびつるぎ町立半田病院は、徳島県西部に位置する地域中核病院として地域の拠り所となる医療機関の役割を果たしており、内科・救急科研修においてはそれぞれの診療科のみならず、地域の核となる医療機関の視点を学ぶことができる。三好市国民健康保険三野病院は、県西部の過疎地に位置する旧三野町の中心的医療機関である。救急指定病院でありかつ地域住民との距離の近い病院である。

 地域医療実習風景

吉野川医療センター及びホウエツ病院
は、徳島県中部の中核的医療機関であり、急性期医療から在宅医療、予防医療まで行っており臓器別ではない内科および小児科の初診外来や救急、病棟を担当することで幅広い総合診療能力を身につけることのできる病院である。

徳島健生病院は、民医連と医療生協に加盟した医療機関である。組合員制度を有し、地域密着型医療を提供してきた歴史をもつ。田岡病院は、徳島市街地に位置し、以前から徳島市内の救急医療を中心とする総合診療に貢献してきた病院である。

徳島県立海部病院は、徳島県南部の中核病院であり内科、整形外科、脳神経外科などに加えて2013年に総合診療科が開設された。外来・救急・病棟を担当することで幅広い総合診療能力を養うことができる。一方で訪問診療も積極的に行っている。
同院は数年前に病院崩壊の危機に陥った病院であるが、地域住民による「地域医療を守る会」が発足し病院の再興に一翼を担った経緯がある。この「地域医療を守る会」の活動は現在も続いており、未受診の地域住民と接触する機会を有し地域を診る目が養われる。

阿南共栄病院は、徳島県南部の中核的医療機関であり、急性期医療から在宅医療、予防医療まで行っており臓器別ではない内科の初診外来や救急、病棟を担当することで幅広い総合内科診療能力を身につけることのできる病院である。

那賀町立上那賀病院は、徳島県の山間部に位置する那賀町内の中核病院である。病床数は40床と規模は小さいが、地域の中核病院として外来・救急・病棟診療を行うことで幅広い総合診療能力を養うことができる。
那賀町立日野谷診療所は、那賀町内の旧相生町地域に位置する診療所である。旧相生町内には本診療所を含め2診療所しか存在せず、地域住民のよりどころとなる診療所であり、赤ちゃんからお年寄りまでが受診している。


 訪問診療の途中で


B.  プログラムの理念、全体的な研修目標

 診療所であれ病院であれ、患者さんの困りごとをどんなものであってもひとまず受け入れられる医師。小児であれ、成人であれ、救急であれ、在宅であれ、胸であれ、膝であれ、皮膚であれ、どのような領域であってもいったん受け入れることのできる医師。医療面接と身体診察を駆使して緊急疾患と重大疾患を早期に鑑別し、年齢、性、地域性による有病率を考慮して、もっとも可能性のある疾患、次に考えられる疾患を想定し、マネージメントにあたる医師。治療はEBMに精通しながらも、それのみにとらわれることなく、患者さんとその周囲の環境、人生のステージに応じて、患者さんや必要に応じてご家族や他職種を交えて相談・カンファレンスのうえ、最良と考えられる方針を決定できる医師。緊急事態においては即行動することのできる医師。いうまでもなく同僚、他科医師、他職種と良好な関係を築ける医師。また未受診の地域住民の健康増進にも寄与できる医師。このような医師の育成を目指します。


 地医輝連と蜂須賀連



C.  各ローテーション先で学べる内容や特色


 内科研修を行う病院では、総合内科医が指導にあたっていることから、臓器別内科診療のみでなく幅広い内科疾患の初診外来や救急、さらには病棟のグループ診療を経験することができる。小児科研修を行う病院では、外来診療では初診を数多く経験することができ、入院診療と合わせて日常的に遭遇する症候や疾患の対応を学ぶとともに、1次救急を中心とした救急診療を経験することができる。救急科研修を行う病院では、日本救急医学会専門医が指導にあたっており、幅広い12次救急患者および3次救急患者の診療を担当することで、幅広い救急対応能力を身につけることができる。すべてが救急研修として研修医・学生指導にも非常に熱心な病院である。徳島大学病院では、内科・小児科・救急科研修および選択研修としての総合診療科研修を行う。これまでに一定の修練を積んだ中堅からベテラン医師向けの設定としており、彼ら彼女らは大学病院における高度専門医療を学ぶメリットは大きいと考えられる。

 総合診療専門研修Ⅰを行う那賀町立日野谷診療所は、設備の整った診療所であり内視鏡・エコー・X線・CT・検体検査を実施できる。常時2名の総合診療医が常勤し、患者層は乳幼児から高齢層まで地域住民のほとんどが受診している。また那賀町の保健センターと地域包括支援センター、およびデイケアが併設されている。旧相生町内に医療機関は2つの診療所しかないため、地域住民の健康を守る家庭医としての自覚を促し、行動する能力を身につけるための最適な環境である。

 県南の美しい海

 総合診療専門研修Ⅱを行う那賀町立上那賀病院は那賀町の中核病院であり、3名の常勤医師はそれぞれが総合診療医である。地元で治療を受けたいという地域住民の希望に応えるため、必要に応じて専門医と連携しながら治療を行うことで、総合診療医としての態度と能力が養われる。各科専門医との連携は、週1日のその他領域別研修を行う海部病院や大学で、各科専門医や総合診療医と対面して相談することが可能である。緊急性を要する場合には、電話等で同じ徳島県南部医療圏に位置する徳島赤十字病院の医師と相談することができる。近日、徳島赤十字病院との画像転送システムが配備される予定である。総合診療専門研修IIに含まれるその他の医療機関はすべて一般病床を有しており、専門診療科および専門医療機関と連携しつつ幅広い年齢層を対象とした幅広い症候や疾患に対応している。


 総合診療専門研修Ⅰ・Ⅱを行う徳島県立海部病院は、内科および総合診療科が病院の中心となる県南部の中核病院である。徳島大学総合診療医学分野から寄附講座として常時3名の常勤医を派遣している。小規模病院ながら各科専門医の週3-1回の応援診療があり、専門医と相談しつつ、自身で継続診療を行うことで総合診療能力を身につけることのできる好環境にある。その他領域別研修もこの海部病院で行う。美波町立美波病院は一般病床を有しており、周辺の専門医療機関と連携しつつ幅広い年齢層を対象とした症候や疾患に対応している。徳島健生病院は民医連と医療生協に加盟した病院であり、組合員を通じて未受診の住民を対象に健康増進活動に取り組むことができる。三好市国民健康保険三野病院は旧三野町の中心的医療機関であり、救急告示病院である。常勤医は内科医師3名であるが、外科・整形外科の応援診療を得て、小児から外科系まで対応しており、「なんでも診る」姿勢を身につけられるとともに、行政と連携した地域保健活動にも取り組むことができる。総合診療専門研修Ⅰ・Ⅱを行う施設の多くは初期臨床研修の地域医療研修を受け入れている。また県立海部病院をはじめとした多くの地域医療機関では徳島大学医学生の地域医療実習も行っている。これらを通じて医学生教育・研修医教育にも携わることができる。


 古牟岐の夜空

 20164月に徳島大学病院に総合診療部が設置され、2017年4月には谷憲治が教授・部長に就任し、同年6月より診療活動を開始した。3名の指導医が在籍しており、その他の領域別研修として総合診療外来で外来診療研修を受けることができることとなった。

 なお、徳島県立海部病院、三好市国民健康保険市立三野病院、徳島健生病院、ホウエツ病院及び美波町立美波病院の5病院は総合診療専門研修Ⅰ・Ⅱの研修施設であるが、原則として総合診療専門研修Ⅰ・Ⅱは異なる医療機関で研修を行うこととする。総合診療専門研修Ⅰの研修期間は外来・訪問診療・地域包括ケアを主体とした研修とし、総合診療専門研修Ⅱの研修期間には病棟・救急診療を主体とした研修期間とする。


 輝く露と桜の花びら





2017年6月5日


徳島大学病院 総合診療部 教授

徳島大学大学院医歯薬学研究部 教授 (併任)

谷 憲治